「SHOE DOG 靴にすべてを。」
起業あるあるが満載
「SHOE DOG 靴にすべてを。」フィル・ナイト著。新聞の書評欄で目にした時には、アメリカの大企業のサクセスストーリーなんて縁遠い話と思っていた。
取材先で、インタビュー相手が直前まで手にしていたので気になって読み始めた。
読み始めると、先入観は覆され、展開に引きつけられていった。
ナイキが立ち上げから、成功を収めるまでの間に、日本の靴メーカーや商社とこれほどまでに深い関わりがあるとは知らなかった。
そして、若者の思いつきと情熱、無謀とも思える挑戦で、世界最高のブランドが形成されていったことに驚かされる。
ビル・ゲイツは本の帯に「読者はすばらしい学びを得るだろう。驚愕の物語だ」と推薦の言葉を記しているが、まさに同意見。
自分自身もそうなのだが、起業家にとってはうなずける「起業あるある」の連続である。
ナイキと比較するなんて、とんでもなく恐れ多いことだが、事業を続けるということは、困難の連続であり、それを乗り越える醍醐味であると確信する。
今後は、三本線ではなく、勝利の女神を買い求めることにしよう。
それにしても、内容が素晴らしいのに、読み終えるのに時間を要した。それは、この本が典型的な翻訳調で描かれているからである。
翻訳文というのは、つまりゆっくりゆっくり前後を確認しながら、読まないと内容が入ってこない。
それはまるで、牛が一度飲みこんだ食べ物を、よくかんでからまた飲みこむように反芻しながらでないと理解ができないからである、とこんな文章になってくる。
翻訳者を悪くいうつもりはないが、どこかの編集者か、ライターが読みやすい文章に直してくれれば、すぐに読み終えることができたのに。